デザインについて (2) – About design


「デザイン」と「Design」。一見、同じ意味を表すように思えるこの二つの言葉は、実は微妙なニュアンスの違いを孕み、その違いは使用する言語や文脈によってさらに複雑さを増します。日本語の「デザイン」は、英語の「Design」よりも遥かに広い意味を持つと言えるでしょう。単なる「設計」や「意匠」といった意味にとどまらず、物事のあり方全体を包括する、より概念的な側面を強く持っています。例えば、社会デザイン、都市デザインといった言葉からも分かるように、「デザイン」は、あるべき姿を目指して、システムやプロセス、そして人々の行動までも含めた全体を計画し、形作っていく、いわば創造的な営みそのものを指す場合があります。 これは、英語圏において「Design」が持つ意味とは少し異なる点です。

「Design」は、より具体的な成果物、あるいはその計画過程に焦点が当てられています。製品デザイン、グラフィックデザイン、建築デザインなど、それぞれの分野で具体的な形や機能を設計する行為、そしてその結果として生み出されるものを明確に示唆します。 確かに、「Design thinking」のような概念も存在し、より広い意味合いを持つようになっていますが、「デザイン」と比較すると、依然として具体的な解決策や形作りに重点が置かれている印象は拭えません。 日本語の「デザイン」が、例えば「人生のデザイン」といったように、抽象的な概念にも容易に適用されるのに対し、「Design of life」は、少し不自然に聞こえるかもしれません。これは、日本語の「デザイン」が、より哲学的な、あるいは精神的なニュアンスを含んでいることを示唆していると言えるでしょう。

さらに、両者の違いは、文化的な背景とも密接に関連しています。日本においては、デザインは単なる美的感覚だけでなく、機能性や使いやすさ、そして社会的な文脈までも考慮した、総合的な視点が求められます。 侘び寂びのような美意識や、全体との調和を重視する考え方は、「デザイン」の解釈に深く影響を与えています。一方、「Design」は、より合理性や効率性を重視する西欧的な思考様式と強く結びついていると言えるかもしれません。

したがって、「デザイン」と「Design」は、決して完全に置き換え可能な言葉ではありません。使用する場面に応じて、それぞれの持つニュアンスを理解し、適切な言葉を使い分けることが重要です。 日本語で「デザイン」を用いることで、より包括的で、文化的な背景を踏まえた表現が可能になる一方、「Design」を用いることで、明確で国際的なコミュニケーションを図ることができます。両者の特性を理解し、効果的に使い分けることで、より正確で豊かな表現が可能になるでしょう。 そして、最終的には、言葉の持つニュアンスを理解し、伝えたいメッセージを的確に表現することが、真のデザインと言えるのではないでしょうか。